袋帯「フランス花文」

 フランスのテキスタイルがモチーフになっています。中央で寄り添うように咲いている2輪の花がとても愛らしい。その左側の小さな枝のお陰で右側から見ているような遠近感があります。構図としての妙を感じさせる柄です。それを活かすように配色を心掛けています。
 配色では地色の青色がヨーロッパ的でとても美しい色だったので、配色の際に黄色を使わず和のイメージから逸脱するように心がけました。

 フランスのテキスタイルというとリヨン地方を思い浮かべますが、西陣織に携わる人間にとって今でも「リヨン地方」は特別な想いを起こさせる場所です。

 西陣が絹織物の産地として今までやってこれたのは明治5年にフランス・リヨン地方へ船で約50日もかけて渡り、紋織機の技術を持ち帰ったことによります(私の場合「リヨン地方」と聞くと先輩ってイメージが浮かびます)
 実は京都では明治元年には天皇が、明治2年には政府が東京へと移ったことにより活気を失いつつありました。そこで新しい京都になるべく様々な挑戦が行われ、その一環としての渡仏でした。
 ジャカードの技術はすぐに普及したわけではなく、機械も高級で数も限られており、扱える職人も始めは少なかったでしょう。どのような革新的な技術であっても新しい技術に否定的な声もあったと思います。
 しかし京都は「新しい物好き」でもあります。高級だったジャカードも徐々に普及して新しい紋屋や綜絖屋も生まれ、新たな織物が開発され、織物産地として活気を取り戻します。しかしそこで生まれた新たな織物も全てが成功するわけではなく栄枯盛衰を繰り返し今に至ります。

 今、和装業界は苦境に立たされており、西陣も例外ではありません。ジャカードの導入を思うと、今は苦境に立たされている西陣織や伝統産業から新しい可能性が生まれるような気もするのです。