風通織袋帯「花唐草市松」

 黄色はさまざまなバリエーションを作っていますが、父も私もよく作ってきた色で木屋太らしい色の一つかもしれません。「花唐草市松」と名付けられたこの柄、モチーフはこれまた木屋太にとっての定番「コプト裂」からになります。市松の中の白のうねっている唐草文様はコプト裂やヨーロッパでも見るパターンで描かれています。メソポタミア文明のくさび形文字がルーツと言われる唐草文様ですが、意識してみるとシルクロードのどこで作られてきた文様なのか読み解くためのヒントになるかもしれません。

 配色はモチーフの実物とは異なる配色になります。地色のレモンイエローに合わせたモダンな配色にしました。今年はビタミンカラーを意識して製作していますが、元気があって街並みにも映える配色になったと思います。

 黄緑の緯糸は浮かして織ることで発色良くボリュームのある表現にしました。白い唐草の部分と立体感の差がこの柄の面白さではないでしょうか?

 柄作りの段階で、どのような糸でどのような織技法にするかを考えて、わずか何mmの織物の厚みの中で奥行きを作っていくのが柄作りのポイントの一つになります。下書きが終わっていても、その柄にふさわしい演出方法が決まらないために、保留になっている未完成の柄もたくさんあるんですよ。

 黄色の部分について、上の写真ではレモンイエローのように見えますが下の写真を見ると赤みの黄色も混じっていることがわかっていただけるでしょうか。1本の糸の中に複数色の色を染めることで単色ではできない複雑な色を表現しています。