フクレ織袋帯「ベスト文様」
御召緯(おめしぬき)を使用したフクレ織の帯になります。「ベスト文様」はフクレ織の人気柄の一つです。
「ベスト文様…ベストって何なの?」そのような声が聞こえてくるような気がします。実は女性誌を見ていた時にリブ編みのベストを見て「こんな可愛らしいデザインもいいな」と思ったのが柄作りの切欠でした。
「リブ編みのどこに魅力を感じたのかな」と適当に線を引いていると曲線による縦方向への伸びが気に入りました。そうやっていくつかの落書きを繰り返していると柄のアウトラインが見えてきました。縦方向の伸びに対してアクセントが欲しいなとレースっぽい部分や花柄は自然に決まった部分です。得てしてそういう部分には素の自分が出てしまうように思います。直線と曲線のバランスや花をクレマチス風にしているところ、花柄だけどシャープな雰囲気という出来上がりに自分の癖を感じてしまいます。
デザインの作り方を無理やり分けてみると、①イメージソースに忠実な物、②イメージソースから新たなイメージを浮かべた物、③イメージソースを必要としない物、になるように思います。今回の「ベスト文様」は②のパターンになるのかな。
柄が出来てくるまでを説明するのは難しいですね。実は柄を作りながら「この部分をこんな織り方にしたらボリュームが出るかな」とか「配色をこうすると帯締めや帯揚げを誘導できるかな」とか考えながら作っていきます。
西陣における織物づくりは、二次元の要素だけではなく、経糸と緯糸の交差する僅かな厚みの中で「締め心地や風合いといった機能」「立体としての演出」を考えながら作っていきます。木屋太では着物も製作しているので、着姿やコーディネートを考えながら作ることもあります。
柄や色だけでなく様々なところに各社の物づくりへの想いが顕れています。個性豊かなメーカーが大勢いる産地としての西陣が継続・発展していけばいいのにな。