畔紗織袋帯「葡萄文」
紋紗と平織による風通織になります。紋紗織の下の平織の生地に柄を織ることによる奥行きのある表現が魅力です。あえてうんちくを語らなくても、一目見て気になるような面白い織物です。単衣、袷の時期に活躍してくれます。
正倉院の「葡萄唐草」をモチーフに制作しました。葡萄唐草の文様は葡萄の実が重なることなく一粒ずつ丸で描かれているのですが、葡萄の実を重ねて描くことで奥行きを強調しています。更に紗の下に葉の柄を織ることで葡萄の文様を浮きだたせています。製作に関わる多くの作業が新しいアプローチの多い織物で、柄の下書きも従来と異なる方法で行っています。
この織物の断面のイメージです。わかりやすくするために経糸は省き緯糸のみになります。左図の上が帯の表になります。
この畔紗織の織物開発により本年度、知恵創出“目の輝き”企業の認定をいただきました。図にするとこのような織組織になります。(わかりやすいのかわかりにくいのか…)
葡萄のモチーフは正倉院にも残されており、多くの実がなることから豊穣の象徴であり、吉祥文様の一つになります。実は「ワインを飲むときにどんな帯だったらステキかな?」と考えたのがこの柄作りの切欠でした。ボルドーレッドのような重くて深い赤色より、気軽で軽やかに飲むワインをイメージしていたので葡萄の色も明るく仕上げました。