経糸を染める事へのこだわり。

 御召や紬のような先染めの着物を制作するとき、経糸に施した染めが、着物の出来栄えに大きくかかわります。(※「先染め」とは糸を先に染めて製織を行う織物のことを言います。江戸小紋や友禅のように生地を染める場合は「後染め」と言います)

 一般論として西陣織の帯は経糸本数が約1800本、西陣御召の場合、約4000本程度(紗や絽のような夏物を除く)の製品が多くなります。経糸本数が多い織物ほど織物の表面に露出する経糸の面積が増えることになり、経糸の色が全体の色を決定づけることになります。

 私見になりますが、御召屋は経糸を操り織組織や機能を作り、帯屋さんは緯糸を操り演出を作る。そのような傾向を感じます。同じ織屋でも物づくりのスタート地点が全く異なることを感じさせられます。木屋太の帯の特徴は「経糸を操る織屋さんが作る帯」と言えます。(今回の写真は帯ではなく御召や御召用の経糸の写真になります)

 木屋太の物づくりには織組織や柄にもこだわりがあるのですが、「この業界って同じような地味な色ばかり」と感じたときから新たな色を作ることに積極的にアプローチをするようになりました。最も苦労していた時期は「物づくり=色の冒険」という風に表現したこともありました。
 私自身が身に着けるものを買う時に「色」というのはとても重要な要素になります。「色」「質感」に十分なクオリティがあると、スッキリとしていたデザインで楽しむことが出来るようになります。意地悪な言い方をすると柄の量を増やすことで質感や風合いをごまかすことが出来ます。
 また弊社は帯と着物の両方をバランスよく作るメーカーです。そのためコーディネートへの関心が強く、色を使ったコーディネートについては頻繁に研究しています。

 そんな木屋太にとって「糸を染める」という過程は特別な仕事になります。私が職人さんに臨むことは「安い」ではなく「挑戦する姿勢」です。低コストでの仕事をばかリを要求していると高い技術は失われ、再び獲得することが出来なくなります。高い質感の物づくりをなさるメーカーさんはそのような努力をなさっていると思います。
 物づくりのクオリティもテストの点数でも言えることですが、40点から70点への成長よりも70点から100点への成長は数倍の時間と努力を要します。100点を目指す物づくりが難しく、担い手も理解者も減ってきたと感じることが増えました。私は「色を染める」というよりも職人さんたちと「色を作る」という意識で日々を過ごしています。木屋太の物づくりは「出来ない」といわず「やってみます」と仰ってくださる尊敬すべき職人さん達によって支えられています。

 弊社でコーディネートしてみました。レモンイエローや金茶もいいんじゃないかな。ざっくりとした風合いの焦げ茶の民芸調の帯もよさそうです。強い色の着物になりますが、柄を控えめにしているので、強いデザインの帯からざっくりとした雰囲気の物、上品な物まで様々な帯を合わせることが出来ると思います。

 今回は長くなりましたが「経糸の染める事への想い」を書いてみました(後日加筆するかもしれません)
 よく考えると私自身が「出来ない」といわれると、「なんでできないの?」「こうやったらできないの?」とかしつこく食い下がるんですよね。お付き合いしてくださるスタッフや職人さんに感謝しなきゃ。

 こちらの反物は明日からの「N180VOL.3 -Birthstone Colors-」、本日からの「西陣織大会、コーディネートコーナー」で見ていただくことが出来ます。